機械のメンテナンス 送り台
整備済みの工作機械でも使用していると送り台は各部摩耗していき、調整が必要になってきます。ガタが多い状態で使用すると更に摩耗を促進させてしまうのでメンテナンスが必要不可欠です。
・日々の清掃と注油が最も重要
加工が終わるたびに機械をバラバラにして整備する必要はありません。日々のメンテナンスにもレベルがあり、使用した時間や内容によって変わってきます。その中でも最も基本的なメンテナンスは清掃と注油です。
・清掃
特に金属加工を行った後は切子の清掃を必ず行いましょう。そのまま放置を行うと古い油が切子とともに固まってしまい、各部にこびりついてしまいます。見た目に影響する部分であればとくに問題になりませんが、送り台の摺動面の場合は摩耗を促進させてしまいます。
摺動面へ切子がついたまま放置すると油とともに固まってしまいます。特にアルミ等の柔らかい金属だと摺動面との間に入り込むと噛み込んでしまいます。
小箒等で大きな切子を取り除いた後、取り切れなかった切子はオイルストーンで落とすことができます。
古い油とともに拭き取るとキレイになります。
・油の塗布と注油
油の塗布は刷毛等で行いましょう。特に指定がない場合、工作機械の摺動面へ使用する油はISO-VG規格の63番が一般的です。(同粘度のコンプレッサーオイルでも可)
それ以上に硬い油の場合、摺動部へ行き渡りません。また、ミシンオイルやスプレー潤滑剤などの柔らかすぎる油はすぐに流れ落ちてしまうため適しません。摺動面へグリースを塗布するのも切子を集めて摩耗を促進させていまうため厳禁です。
各オイルカップへは油差しを使用して注油を行います。動作させながら行うと油が回りやすいです。
注油し辛い場合はピン等でオイルカップのボールを若干押し下げて行うと入れやすいです。
こちらもISO-VG68番の油を使用します。
・ジブ(カミソリ)の調整
各送り台にはジブ(カミソリとも呼ぶ)がアリ溝の間へ入っており、その調整にて送り台のガタを無くしています。
長期間使用された機械は摺動面が摩耗するため、このジブの調整を定期的に行うことでスムーズな動作を可能にしています。
・ジブ調整が必要になるまでにはかなりの時間がかかる
清掃と注油の基本的なメンテナンスを行っていればジブの調整が必要になるまでかなりの時間を要します。通常、毎日仕事で長時間使用していたとしても、数週間でガタが出てくることはありません。
仮に数週間程度の使用ではじめに比べてガタが明らかに大きい場合は以下の要因が考えられます。
1. 基本的なメンテナンスの不足
被削材の種類にもよりますが、基本的なメンテナンスを行わないと摺動面の摩耗はかなり大きなものとなります。また、金属材料でなくプラスチックや木材等の非金属でもこれは起こる問題であり、清掃と注油は必ず必要になります。(プラスチックや木材は特に油を吸い取ってしまうため潤滑不良が起こりやすい)
2. 機械の限界を超えた重切削
切り込み量や送り速度を過大にすると機械に大きな負担がかかります。負担が大きいと主軸が止まってしまったり、バイト等の工具が破損するのは当然ですが、送り台回りの摺動面へも大きな負担がかかってしまいます。
3. 加工中に大きな衝撃が加わった
回転中のチャックやワークへバイト等の工具や送り台を接触させてしまうと重切削と同様に大きな負担がかかります。
これらの要因を避けるような使用を心がければそう簡単に調整が必要となる事はありません。
・実際の調整
ジブの調整は一見単純に見えますが、かなり奥が深い整備です。かなり調整を追い込むには送りねじなどを取り外して送り台の感触をダイレクトに確かめる必要があります。(多くのノウハウが必要)
このような重整備を行う場合、かなりの分解が必要となってしまうため、現状に特に不満がなければ微調整程度に留めることをおすすめします。
イモねじ式の場合、送り台をフルストロークさせてガタがある箇所を確かめます。
その箇所をカバーしているイモねじを調整します。
ナットを緩める際、イモねじが緩んでしまわないようにレンチを若干締める方向(時計回り方向)に回す力をかけておきながらナットを緩めます。
その後、ほんの微量イモねじを締め込み、ナットを締めてイモねじをロックします。
送り台をストロークさせて感触を確かめ、軽いようであれば繰り返します。