旋回台によるテーパー加工
NC旋盤でのテーパー加工はプログラム通りに送り台が同時に動いてくれるため、特に深く考える必要もありませんが、手送りによるテーパー加工の場合はそうも行きません。
本章では汎用旋盤の旋回台を活用したテーパー加工の解説をしていきます。
・テーパーの予備知識
テーパー加工と言っても図面での指定はどの様になっていて、旋回台をどの位置にセットするかということがわからなければ正しく加工は行なえません。
・テーパー加工寸法
以下の図に示す値は次のとおりに計算が行なえます。
?テーパー比 = (a - b) / L
例)テーパー比が1:16の場合にどのような寸法となるかを考えます。
「テーパー比 = (a - b) / L」と上記の図から、簡単に言えば「aの寸法からテーパー比の分母分L方向に進むとbの寸法が1mm小さくなる」ということがわかります。
具体例として、テーパー比1:16(16分の1)でa寸法がΦ50mm、L寸法が16mmであればb寸法はΦ59mmとなります。
旋回台の角度は以下の式で求められます。
θ = tan-1 (テーパー比 × 0.5)
上記の例(1:16)では以下のように計算を行います。
θ = tan-1 ( (1 / 16) × 0.5) = 1.79度
・実際の旋回台セット
先程角度の計算は行えましたが、旋回台の目盛りを使って実際にそこまで細かくセットすることは困難です。
そこで、正確に旋回台をセットする方法としてテスト棒とダイアルゲージを使用した方法があります。
これまでの説明にて、L方向に進むとどれだけ直径が変化するかということに触れましたが、この法則を使います。
チャックへテスト棒をチャッキングし、縦送り台へダイヤルゲージを設置しテスト棒へセットします。
往復台を固定して縦送りを動かすと現在旋回台がどの程度テスト棒に対して旋回しているかを見ることができます。
先程の例での数値を用いると、テーパー比1:16の場合、Z方向に16mm縦送りを動かせばダイヤルゲージが0.5mm戻ります。(半径値なので0.5mmです)
ポイントとしては、送り量が多ければ多いほど正確にセットすることが可能ですので、縦送りのストロークを調べて「このテーパー比の場合、どれだけ送ったらダイヤルゲージはどの程度戻る」というのを計算して調べるといいでしょう。
・加工してみよう
旋回台のセットが行えたら実際にテーパー加工を行ってみましょう。
今回はΦ10mm〜Φ9mmまでの間をテーパーにします。先端部がΦ9mmで、段付きになっている部分がΦ10mmです。
横送り台にて切り込み量を指定し、縦送り台を送ることによりテーパー切削を行います。
旋回台を使用したテーパー切削では自動送りが使用できないので注意します。(通常通りの切削となってしまいます。)
写真ではわかりにくいですが、テーパー切削が行えました。
ノギスではさみ、光を当てるとおおよその場所がわかります。
Φ10mm→Φ9mmの範囲が16mmとなっています。
・旋回台をもとに戻す
通常の切削に支障をきたしてしまいますので、テーパー加工後は旋回台を元の位置に戻します。
先程の精密に合わせる方法をそのまま使ってもとに戻します。
正確にもとに戻せていない場合、縦送りを使用した切削を行うと外径・内径・端面全てにおいてテーパーが付いてしまいます。
まず、目盛りを頼りに目視で合わせ直します。
その後テスト棒とダイヤルゲージを使用して縦送りを動かし、ダイヤルゲージの目盛りを確認します。
旋回台が元の位置に戻っていれば縦送り台をいくら送ってもダイヤルゲージの目盛りは動きません。