切削の基本・・・rev.2
バイトを使用した旋盤での加工には以下の基本要素があります。
材料を刃物で削り取っているだけとはいえ、様々な要素が関係してきます。
・切削条件
旋盤での加工はワークを回転させ、材料を削り取っていきますが、その際に考えていかなければならない3つの要素があります。
切削速度・回転数・ワーク直径
切削速度は現在削り取っている径方向の要素であり、適切でない場合には切削負荷が大きくなり刃の保ちが悪くなります。また、機械にも負担がかかるため適切な条件で行う必要があります。
この値は切削する材料・刃の材質により変わり、以下のようになります。
?切削速度低→ ステンレス < 鉄系 < アルミ ←切削速度高
?切削速度低→ ハイス < 超硬 ←切削速度高
切削速度は以下の式で求められます。
V = ( π D N ) / 1000 [m/min]
V:切削速度 [m/min]
π:円周率 3.14
D:ワーク直径(フライス加工の場合刃径) [mm]
N:回転数 [rpm]
簡単な各要素の関係性としては、回転数を上げると切削速度が高くなり、ワーク直径が小さくなると切削速度が低くなります。
すなわち、同じ回転数でどんどん外径を削っていくと直径が小さくなるにつれて切削速度が低くなっていきます。
端面切削を行うとその様子がわかりやすく、径によって仕上がりが変わっていることがわかるかと思います。
あまりにも大きく条件の範囲を外れていなければ荒取り切削ではあまり気にしませんが、そのまま仕上げを最後に行う場合は最終切り込みの前に回転数を適切に合わせたほうがきれいな仕上がりとなります。
送り量・送り速度・回転数
送り量は先程の切削速度とは違い、ワークの軸方向の要素であり、加工時間と表面の仕上がりに関係してきます。また、切削速度と同様に適切でない場合は刃の保ちが悪くなり機械にも負担がかかります。
送り量は以下の式で求められます。
f = F / n [mm/rev]
f:1回転当たりの送り [mm/rev]
F:送り速度 [mm/min]
n:回転数 [rpm]
送り速度は送り台をどのくらいのスピードで送っていくかの値です。そして現在の回転数から1回転あたりの送り量が求められます。
スローアウェイバイト用チップ等の切削条件表に記載されている「0.1〜0.2」のような値はこの1回転あたりの送り(f [mm/rev])のことを指します。
送り速度が早ければ加工が早く終了しますが、1回転あたりの送り量が増えてしまうため表面の仕上がりが荒くなる傾向になります。
簡単なイメージとしては、ねじのピッチを想像してみるといいでしょう。ねじピッチはねじが1回転するあたりの進む量ですから、3mmピッチなどのねじは見た目がゴツゴツしていますが、0.3mmピッチの小さいネジは見た目がサラッとしています。これと同じ考えで、表面の仕上がりが決まってきます。
「切削速度」と「送り」と「回転数」
これらの要素を同時に考えると、切削速度と送りを固定して回転数と送り速度を可変させる事により、直径の変化による仕上がりを均一に保つことが可能です。
また、切削条件通りに加工することにより刃の保ちが最も良くなります。
ただし、G96一定面速度モードを使用したNC旋盤でもない限り、回転数のダイナミックな制御は難しいです。
まずは使用するバイトの材質と加工する材料、現在加工してい直径を考えることによっておおよその条件がわかるため、直感的になれてくるまでは予め計算を行っておくといいでしょう。
切削条件がわからない場合
0.1mm程度の少ない切込みで切削試験をしみてることで大体の条件を知ることができます。
まずは低めの回転数にて端面切削を行い、切削を行う直径での適切な回転数を調べます。
きれいに削れている箇所があればその箇所を基準として回転数を上下させ、外径部分にその箇所を持っていきます。
例えば端面の仕上がりが「削れ始めは荒く、徐々にキレイになり、そしてまた荒くなる」といった場合は最外径部分の切削速度は速いということがわかるため回転数を下げます。
その回転数と直径から切削速度が逆算できるため、その値を使って他の直径での切削時に対応していきます。
次に外径切削を行い、送り速度を調べます。
単純に、ゆっくり送れば仕上げ面がきれいになっていくため、仕上げの送り速度はそこまで難しくありません。
問題となるのは荒取りの送り速度で、早いほうが効率的ですが機械の限界があるため、低い速度から徐々に上げて調べます。
主軸の回転が落ち込んだり、手送りの場合は感触に違和感を感じたら機械が負けているということですのでそれ以上の速度には上げないようにしましょう。
・仕上げと荒取り
仕上げ切削
切削速度は使用するバイトの条件通り、または上記方法で求めた値にて加工します。
外径の送り・送り速度に関しては求める仕上げの表面粗さによって変えていきます。
切削条件にて範囲が指定されている場合、きれいに仕上げたければ低い速度で加工します。
荒取り切削
仕上げと違い、いかに短時間で加工するかということが優先されるため、切削速度を厳密に合わせる必要はありません。
むしろ、荒取りの初期段階で切削条件を探っていくというのもありです。
ただし、機械剛性を超えた切削は行わないように注意して加工を行います。
・連続加工と断続加工(安定切削・不安定切削)
一定に切削を行っていく連続加工はバイトの刃先にかかる切削中の負荷が安定しますが、角材やギアの外径など断続的に切削が行われる断続加工では刃先へ衝撃が加わり負荷が大きいと刃先がかけてしまうこともあります。
刃先角が大きいバイトを活用
断続加工を行う場合、回転数を若干低めにし少なめの切込みにて加工を行います。
また、刃先角が大きいと刃先強度が高くなるので、ロウ付けバイトであれば片刃バイトや横刃バイト、スローアウェイバイトであれば80°(C型・W型)や55°(D型)のチップが有利です。
スローアウェイバイトではチップ材質の種類にも注目
チップの材質には被削材に対する種類だけではなく、連続加工向きか断続加工向きかの選択も行えます。
チップカタログに記載されているマークにて連続加工向け・断続加工向け・中間切削向けの3種類が選択できます。