回転センターを用いたワークの支持
固定センターと違い、回転センターはアーバーと本体の間にベアリングが入っており、回転することで高回転・高負荷での支持が行なえるようになっています。
・用途
基本的には固定センターと同じ用途で使用しますが、先端部分が回転することにより固定センター使用時以上に高回転での加工が可能です。
ただし、ベアリングを内蔵する関係で先端の本体が若干太くなっているため、ワークの先端の形状や直径によってはバイトが干渉して加工が行えないことがあります。加工を行う前に仮でワーク・バイト・回転センターをセットし、干渉のチェックを行ってから加工を行うといいでしょう。
また、同じくベアリングを内蔵する関係で心押台の心押軸より先端までの距離が長くなるため、加工に使用できる芯間距離が狭くなります。
・使い方
固定センターと異なり、油の塗布が不要になるのみで使用方法に変わりはありません。
ベアリングを内蔵している部分が大きいため、特に刃物台やバイト等との干渉に注意します。
ワークの両センター支持
通常、チャックを用いてワークをチャッキングしますが、主軸側と心押台側を両方センターにすることにより両方からセンター支持を行って加工を行うことが可能です。
昔の職人たちはチャックではなく、こうした方法を主に使用していたようです。
・両センター支持の利点
チャックと違い心のズレが無い
→三爪チャックはワークの脱着を行うと心がズレてしまいますが、両センター支持の場合は外側から掴んでいるわけではないため外径方向の心のズレは起きません。ただし、センターの押す力やワークの熱によって軸方向のズレは若干生じるため外径切削のみに適していると言えるでしょう。
加工できるワーク外径がチャック依存ではなくなる
→センター穴さえあいていれば支持できるため、チャックでの最大把握径より大きい径のワークを加工することができます。
具体的には主軸の中心から使用するバイトの先までの半径のワークであれば加工が可能です。
心押台によるテーパー加工へ応用ができる
→テーパー加工は通常旋回台を用いるのがセオリーですが、両センター支持でワークを支持し心押台をオフセットさせることで旋回台を用いることなくテーパー加工が行えます。
旋回台が備わっていないPSL250-VDではこの方法を使います。(詳しくは心押台によるテーパー加工を参照ください)
・加工方法
ワークの両側へセンター穴加工を行う→主軸からチャックを取り外し固定センターを取り付ける→心押台にも固定センターまたは回転センターを取り付ける→回し金を取り付けたワークを両側からセンターで挟み込む→回り止めのボルトを取り付ける
この方法では回し金の対応する径に依存してしまいますが、写真のようにワークの一部を段付きにしたりアダプターを製作することにより対応可能です。
また、回し金を対応する径のものに交換するのも有効です。
固定センターと同時に面板を取り付け、回り止めを面板に取り付けるという方法もあります。
注意点として、回り止めのボルトを付けている事により回転数によっては振動が出てしまうため、切削する回転数で振動が気になる場合は反対側の穴にも同サイズのボルトをカウンターウェイトとして取り付けるとバランスが取れるため振動が軽減されます。
また、小型旋盤では心押台の剛性面で重切削向きではないので特に直径が大きいワークの加工は慎重に行いましょう。
ワークが熱を持ちすぎると細いワークの場合、熱膨張により全長が伸びて最悪曲がってしまうことがあるので注意しましょう。